筆者です。
仕事上で褒められた時、もしくは、褒められている人がいた場合、「滅相もない」という語を言ったり、聞いたりしたことはありませんか?
ですが、この「滅相もない」という表現は仕事上で相手に失礼にならない言葉なのか?カジュアルな表現ではないのか?という部分に疑問を持ちます。
今回は褒められた時に「滅相もない」という返答が仕事上で相手に失礼にならない表現なのか?失礼になる表現なのか?ということを解説していきたいと思います。
特に仕事上、目上の人から褒められた時の返答として活用することができるので、是非参考にしてみてください。
この記事でわかること
・「滅相もない」の語源
・「滅相もない」の例文
・「滅相もない」の言い換え表現

文筆家
たくしん
takushin
プロフィール
- 野球歴13年 小学〜大学まで
- 主にキッチン、接客、フィットネスインストラクターのアルバイトを経験
- 吃音症歴20年
- オートローン会社(金融業界)に1年半在籍
- スーツ生地メーカーのオーダースーツ販売店に約4年在籍
- 百貨店販売員経験あり
- 読書を月10冊ほど
- 筋トレ歴約7年
- 文章を書く時に一番饒舌になるタイプの人間
「滅相もない」は仕事で使えるのか?

結論からお伝えすると、「滅相もない」という表現は”適切な表現”です。
冒頭でもお伝えしましたが、特に仕事上でなにか目標を達成した時、上司から褒められた時などに「滅相もない」という表現は使うことができます。
また、仕事だけではなく、プライベートでも目上の人との会話で「滅相もない」という表現を使うのは適切であり、相手に失礼にあたらないといえます。
では、仕事上やプライベートで「滅相もない」という表現が失礼にあたらないのはなぜでしょうか。
次の項目で解説していきます。
「滅相もない」とは?

「滅相もない」この言葉は会社に入るとよく聞くようになると思います。
なんとなく「謙遜している感じかな」で使ってはいませんか?
実際に筆者はこのように何となく使用しているときがありました。
この項目では「滅相もない」という表現を徹底的に分析していき、確信をもって使用できるようにしていきたいと思います。
・意味
・語源
意味
「滅相もない」という表現の意味は一言で言ってしまうと「とんでもない」という意味で対話表現として使われています。
「とんでもない」という意味の他には「あってはならない」「思いがけない」「恐れ多い」などの意味ももちあわせています。
「とんでもない」「思いがけない」「恐れ多い」という意味で使われることから、「謙遜する時」に使いやすいという感覚があり、また、その使い方は”間違えではない”ということが言えます。
ですが、上司などの目上の人との会話の時に「滅相もない」という語だけでは何となく使いづらいと感じることはないでしょうか?
その違和感は当たっています。
「滅相もない」というのは「とんでもない」という意味と同じ意味で相手に伝わります。
ただ、この時、「滅相もない」の意味である「とんでもない」という表現はまだ敬語表現ではありません。
あくまでも、相手の褒めや賞賛に対しての謙遜した受け答えの際に用いる表現です。
つまり、言葉自体が相手を敬う”敬語”なのではなく、ニュアンスが”謙遜”している表現なのです。
ですので、相手からしたらどちらでも捉えられてしまいます。
・褒めに対して謙遜しているのか
・褒めたこと自体に「そんな事を言うなどとんでもないことだ」と避難しているのか
ですので、この場合は”敬語”にしなければいけません。
・滅相もない”です”
・滅相もない”ことです”
このように使用することで、上司や目上の人からの言葉に対して謙遜していると伝えることができます。
参考文献:文化審議会答申 敬語の指針 47p
語源
では、「滅相もない」の中の「滅相」という言葉は一体どこから来ているのでしょうか?
語源を知ることで、より適切な場面で使用することができます。
「滅相」というのは、仏教言語なんです。
仏教の中に「諸行無常」という語があります。
おそらく中学高校などで習うであろう、「平家物語」の冒頭「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり」の一節にも入っている”諸行無常”です。
”諸行無常”は簡単にお伝えすると「この世のすべての物事は変化し同じ状態にはいられずに無限に続くことはない」ということを表している仏教の根幹的思想であり、これをより具体的に表した思想として”四相”というものがあります。
四相
・生相
・住相
・異相
・滅相
この頭文字を合わせて「生住異滅(しゅうじゅういめつ)」とも言われています。
これは何のことなのかというと”人の一生”なんです。
「人が生まれて、存在し、変化していき、やがては無に帰す」これが四相が表しているものです。
「滅相もない」で使われている”滅相”はこの中の”滅相”が語源です。
四相の中の”滅相”は「なくなること」「無に帰すこと」を表しています。
ただ、人はなくなること、つまりは”死”に恐怖を覚え、突飛になくなることに恐怖します。
つまり、なくなることに恐怖を感じている人間からしたら、なくなること=滅相とは「とんでもないこと」「思いがけないこと」「あってはならないこと」と捉えることができるのです。
長くなりましたが、このように仏教思想から”滅相”という語源がきており、語源をたどると「滅相もない」=「とんでもない」という意味になるということが納得していただけるのではないでしょうか。
「滅相もない」を使うタイミング

次は実際に「滅相もない」という語をどのようなタイミングで使用したら良いのかということを解説します。
「滅相もない」という語を仕事上で使うタイミングは「上司や取引先など目上の人に褒められた時」が主に適切な使い所です。
このようなタイミングで使う場合は相手に
・褒められたことに値するにはまだまだ力不足です
といった謙遜したことが伝わります。
また、目上の人とだけではなく同僚との会話でも使用することができます。
・こんなところで滅相もないことを言わない方が良い
このように同僚との飲み会の時に同僚が会社の良くない話をし始めた時などに、「こんな公の場でとんでもないことを言うのは良くない」というタイミングなどにも使えます。
では、実際の語を使うタイミングを考えて、「滅相もない」の例文を紹介していきます。
実際に使う時の参考にしてみてください。
「滅相もない」の例文
お褒めいただけるなんて、滅相もないです
→上司や取引先などの目上の人から褒められた時に謙遜する時。
そのようなお言葉をいただくなんて、滅相もないことでございます
→目上の人から褒められたり、感心された言葉を言われた時、「そのような」は「そんな」とは言わないように注意です。
「そんな」では相手の言葉を見下している感を与えてしまう可能性があります。
〇〇様(お客様)に教えるなんて、滅相もないことです
→お客様に物事を教えてほしいと言われた時の謙遜する表現です。
まずは、最初にこのように言って、それでも教えてほしいと言われたら「恐縮ではございますが…」と教える流れにすると相手に丁寧に伝えることができるので良いです。
お礼なんて、滅相もないことでございます
→お客様からお礼のお菓子などの頂き物をもらった時に貰う前に言うと良いです。
「滅相もない」の言い換え表現

「滅相もない」という表現は「とんでもない」「思いがけない」「あってはならない」という意味で使われます。
また「滅相もない」という表現は他の語にも言い換える事ができます。
言い換え表現を覚えておくことで「滅相もない」という語を起点に使える語が増え、相手へ適切に伝えたい表現を伝える事ができるようになります。
以下の言い換え表現をおさえておいてみてください。
・とんでもない
・恐れ入る
・恐縮
・光栄
・思いがけない
「とんでもない」「恐れ入る」「恐縮」という言い換えは、相手からの言葉に対して謙遜する時に使うことができます。
・自分なんかがいただいた言葉に合うかどうか…
このような感じです。
「光栄」「思いがけない」という言い換えは、相手からの言葉に対して謙遜しながらも嬉しさを伝える表現として使えます。
・もらった言葉が素直に嬉しい、あなたに言っていただけるなんて最高だ
こんな感じです。
伝えたいニュアンスで言い換えるのも良いでしょう。
「滅相もない」を使う時の注意点
最後に「滅相もない」を使う時の2つの注意点をお伝えします。
「滅相もない」を相手との対話で使うときは以下の2点に注意して使ってみてください。
・主語を入れる
・敬語表現に気をつける
主語を入れる
例えば、相手の褒め言葉や賞賛に対して「滅相もない」という語を使用するのであれば、”主語”を入れると相手に誤認されずに使用することができます。
前項でもお伝えして重なってしまう部分ではありますが、「滅相もない」という表現は”相手が発した言葉”に対してなのか”自分の立場的なものなのか”という2つの視点から見ることができます。
・相手の言葉はとんでもないことを言っている!(マイナス的な)
・相手の言葉はあってはならないことだ
・相手の言葉に深く感謝したい
もし、謙遜して相手からの言葉のありがたさを伝えたいのであれば、しっかりと主語を置くことです。
・「そのようなお褒めの言葉を言っていただき」
・「アドバイスをいただけるなんて」
このように「相手のどんな言葉に対して」「滅相もない」と思ったのかを明確にすることが大切です。
敬語表現に気をつける
「滅相もない」を使うときは敬語表現に気をつけてみてください。
「滅相もない」という言葉自体は、ニュアンスとして”謙遜”を表す語ですが、”敬語表現”ではありません。
「滅相もない」という語に「〜です」「〜ことでございます」という敬語表現をくっつけることで敬語表現になります。
そして、たまに「滅相もございません」という語をみかけますが、これは適切とは言えない語です。
なぜならば「滅相もない」という語がそもそも”一語”であり、「とんでもない」という意味をもっているからです。
このことから、「滅相もない」という語の中の一部分を変えて「滅相もございません」と表現することは適切ではないのです。
一語で成り立っているということをおさえておくと良いです。
まとめ
今回は「滅相もない」という語を仕事上で使えるのかどうかを「滅相もない」という語を解説しながら紹介していきました。
とくに、目上の相手からのお褒めの言葉、賞賛された時なんかに使える言葉です。
謙遜しながらも有難さを相手に伝えたい時に今回紹介したことをふまえて使用してみてはいかがでしょうか。
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