筆者さかい。
新社会人になって、スーツを買う時に「どんなデザインのスーツにしたら良いのかわからない」なんてお悩みありませんか?
特に、スーツのスラックスの”裾のデザイン”は「シングル・ダブル」どちらにすれば良いのかは、スーツを選ぶ時に頭を抱えてしまう要因の一つです。
筆者はオーダースーツの販売員をしていた経験がありますので、今回はその仕事で得た知見と、新社会人が選ぶと良いスーツの裾のデザインを紹介します。
この記事でわかること
・新社会人が選ぶと良い裾のデザイン
・裾の起源
・オーダースーツで選ばれる裾のデザイン

文筆家
たくしん
takushin
プロフィール
- 野球歴13年 小学〜大学まで
- 主にキッチン、接客、フィットネスインストラクターのアルバイトを経験
- 吃音症歴20年
- オートローン会社に1年半在籍
- スーツ生地メーカーのオーダースーツ販売店に約4年在籍
- 読書を月10冊ほど
- 筋トレ歴約7年
- 文章を書く時に一番饒舌になるタイプの人間
スーツの裾のデザイン

スーツの裾のデザインは、基本的に「シングル」「ダブル」の2つあります。
オーダースーツでは、この他に「モーニングカット」というデザインもあります。
それぞれ紹介します。
シングル裾

このデザインは、裾の折り返しをつけずに、足元に向かってストンッと落ちるような、シンプルな見た目のものです。
シングル裾はスーツで多く見られるデザインです。
既製品で売っているスーツでも多くのスーツに見られます。
シングル裾はその無駄のないデザインであるが故、どのシーンでも使うことができるデザインのものです。
筆者も持っているスーツの8割がこのデザインのもので、とても重宝しています。
ダブル裾

ダブル裾は、シングル裾とは違い、裾に折り返しがあり、シングル裾は違い、ややアイコニックなデザインとなっています。
初めてのスーツや、あまりスーツを着る機会がない人にはあまり見慣れないデザインではないでしょうか?
筆者もスーツを自分で買い始めた時は、「へぇ〜これがおしゃれかぁ〜」と初めてのオシャレに感心してました。
このデザインを知り、よく意識して見てみると吊るし(既製品)のスーツでも見かけることが多いということが分かります。
ダブル裾は、ボタンで折り返しが止められているものもありますし、糸で縫い付けられているデザインもあります。
もし、ダブル裾を選ぶのであれば、個人的に糸で縫い付けられているものの方が、無駄な膨らみがなく、デザインとしてかっこいいのでオススメです。
番外編モーニングカット

これはあくまでも番外編の裾のデザインです。
こちらはモーニングカットと言い、元々モーニングという昼間の正礼装に使われる裾のデザインです。
裾の前部分を少し短くして前短く・後ろ長くなっているデザインです。
このように前後の長さに差異をつけることにより、後ろは無駄な生地のたごみなく、ストンと落ちて真っ直ぐに見え、尚且つ前の裾も無駄なたごみなく真っ直ぐにストンと落ち、見た目が綺麗になるという大きなメリットがあります。
普通の裾(シングル・ダブル)だと前と後ろの裾の長さがほぼ一緒なので足の付け根の部分でどうしてもたごんでしまうという現象が起きます。
これを防げる形でオーダースーツを作る時は”モーニングカット”という裾のデザインを選ぶことができます。

裾のデザインの起源

ただ単に、スーツのデザインが分けられているわけではありません。
シングル、ダブル、それぞれデザインの起源があります。
シングル裾の起源
まず現代のスーツの起源となった出来事が1666年10月にイギリスで起こります。
それがチャールズ2世が行った服装改革宣言です。
この宣言により、スーツの主なパーツである、「シャツ」「長袖上着」「ボトム」「ヴェスト」「タイ」という組み合わせが誕生しました。
そこから現代のスーツの形へと年々進化を遂げていったのです。
そして、ここからが重要です。
服装改革宣言が発動された背景としては、第二次英蘭戦争、ロンドン大疫病、ロンドン大火など、様々な国難に陥っており、当時豪華絢爛の服装が主で、身分の差や浪費の象徴となっていたファッションに対して、王自らが”無駄を省くファッション”を推進することで、国の秩序を回復するという目的がありました。
つまり、ファッションでプロパガンダを行ったということです。
この宣言の中の”ムダを省くファッション”の中から、シンプルな”シングル裾”の服装が進化、または、広がっていったと考えられます。
また、シングル裾は1666年以降、貴族、公務員、議員などの公式の装いの基準となっていることから、「シングル裾=フォーマル」という慣習ができたと考えられます。
ダブル裾の起源
ダブルの裾の起源に関しては様々な諸説があります。
競馬場のぬかるんだパドックでスーツが汚れないように折り返したのを見た人が「かっこいい!」と思って真似たとか。
狩猟中に泥はねでスーツが濡れないように捲ったとか。
1番よく聞く通説が『雨の中パーティーに来た紳士が濡れないように裾を捲っていた姿がカッコよく感じ広まった』と言うものです。
他にもイギリス王国のエドワード7世のエピソードも有名です。
狩猟に来たエドワード7世が、泥で汚れないために裾を上げていた姿がカッコよく映り、ダブル裾が流行ったという話です。
共通するのは、どれも”汚れから守るため”にスーツの裾を捲ったと言うことですので、物を大切にする心、または、見た目に気を使う心から生まれた形だと考えられます。
新社会人が選ぶと良いスーツの裾のデザイン

では、実際に新社会人がスーツを買う時にどちらのデザインのスーツを選べば良いのか?
答えは”シングル裾”一択です。
シングル裾を選ぶ理由としては
①ビジネスシーンだけではなく、フォーマルシーンでも使えること
②周囲から変に見られないこと
③裾を修理しやすい
という3つがあります。
フォーマルシーンでも使えるというのは、シングル裾の起源から言えることであり、「周囲から変に見られない」ということは、ダブル裾を「オシャレ」と勘違いしている人がたまにいます。
そのような人が新社会人がスーツの裾をダブルにしているのをみたら、変に思ってしまう可能性があります。
無駄な認識違いを起こすことを防ぐという面でシングル裾は良い選択肢といえます。
「裾を修理しやすい」というのは、ダブル裾は一度ダブルをほどいてから裾の長さや巾を修理しますが、シングル裾ではダブルの修理の手間がなく修理することができます。
これは、修理を請け負う店によっては、費用が変わる点でもあります。
シングルの方がランニングコストがかかりにくいという点がメリットと考えられます。
以上の①〜③のメリットから新社会人はシングル裾を選ぶのが良いと言えます。
場面に合わせた選び方

次に、場面に合わせた選び方を紹介します。
場面に合わせた選び方を知れば、”シングル裾”だけではなく、”ダブル裾”も今後選択肢にできます。
こちらも参考にしてみてください。
・ビジネスの場合
・結婚式などの催事の場合
ビジネスの場合
シングル・ダブルどちらでも可です。
シングル=フォーマル場面でもビジネス場面でも適正
ダブル=ビジネス、カジュアル着として適正
やはり、シングルのスーツはどんな場面でも使用できると言う点に関して強みがありますね。
ダブルの裾はややカジュアルの認識だと言うことです。
しかし、ビジネスシーンに”ダブル裾”を選ぶことは全然問題有りません。
ですので、結論、ビジネスの場面では自分のお好みで着用するのが良いと言うことです。
結婚式などの催事の場合
結婚式などの催事の場合、やはりオススメなのは”シングル裾”です。
おすすめというよりかは適正であるといった方が正しいです。
前項でも述べたとおり、ダブル裾はややカジュアルな認識なので結婚式などの催事では似つかわしくないということです。
ですので、結婚式などの催事に行く場合はシングルの裾スーツを選ぶと良いです。

新社会人におすすめなスーツの裾の長さ

新社会人におすすめなスーツの裾の長さは、
生地が溜まりすぎない、くるぶしがしっかりと隠れた長さ
これが一番後悔がなく、長く着ることができる裾の長さです。
スーツの裾の長さは様々あります。
・くるぶしをあえて見せる長さ
・くるぶしは隠れているけど靴には生地がかからない長さ
・靴にかかるが生地が溜まり過ぎない長さ
etc…
裾が長すぎると、生地が溜まりすぎて、不格好になってしまいますし、逆に、裾が短すぎると流行具合が強く、ファッショナブルに映り、若く見えるということがあります。
このような懸念点がなく、見た目もよく見え、流行に左右されず長く着ることができるのが
・生地が靴に少しかかる
・生地が溜まりすぎていない
・くるぶしがしっかり隠れている
裾の長さが新社会人の裾の長さが適切です。
店員さんに伝える時は「ハーフクッション」といえば伝わります。
または「靴に少しかかる生地が溜まりすぎない長さ」といえば大丈夫です。
裾の長さを調整する方法

もし、今持っているスーツの裾の長さが気になる!
というお悩みをお持ちの人は、「スーツの裾の長さは調整できる」という認識を持つと良いです。
裾の長さを調整する方法は
・スーツを買った店に問い合わせてみる
・百貨店にある服の修理店に出す
・街の服の修理店にお願いする
というのがあります。
スーツのお店は基本的に修理も請け負っているところが多いです。
費用に関しては、あまり差異はありませんが、一番はスーツを仕立てた工場に修理をしてもらうというのが、縫製の中身を熟知しているという点で安心です。

シングル裾とダブル裾のメリット

シングル裾のメリットは前項で紹介した通りです。
ダブル裾の筆者が考える最大のメリットは、「生地の重さ」で裾がキレイに落ち、見え方がキレイになることです。
ダブル裾はシングル裾よりも折り返している分、生地を多く使っています。
多くなった生地の分、それが重りとなり、裾がストンッと落ちるんです。
ただ、ダブル裾は折り返した生地のくぼみにホコリが溜まってしまうというデメリットがあり、定期的な折り返し部分のブラッシングが必要になります。
ですが、デメリットを払拭するほど、見た目がきれいに見えるというのは良いポイントだと考えます。
ダブル裾を選ぶ時のマッキン巾
新社会人の方でも、「ダブル裾を選びたい!」という人はいると思います。
もし、ダブル裾を選ぶのであれば、裾の生地の折り返し巾のことをマッキン巾(これは店によって異なります)と言うのですが、この巾は身長にもよるのですが、大体3.5~4cmの巾がおすすめです。
太すぎず、細すぎない、主張しすぎないのがこのサイズです。
もしダブル裾を選ぶなら参考にしてみてください。
オーダースーツで選ばれる裾のデザイン

筆者がオーダースーツの販売員に従事していた頃、オーダースーツをお作りのお客様の中で、スーツの裾のデザインをお選びになる時に、選ばれるのが多いデザインは何だったのかをご紹介します。
選ばれるのが多い裾のデザインは体感
シングル:6割
ダブル:4割
でした。
モーニングカットにする方はほぼいませんでした。
筆者はモーニングカットが生地がナチュラルに下に落ちて、無駄な生地の溜まりができにくく、仕立て映え(スーツになった時にキレイにカッコよく見える)がしやすかったので、モーニングカットを進めてご了承いただくことはありましたが、お客様自ら「モーニングカットにしてほしい」という方はあまりいませんでした。
シングル裾はやはり、「ビジネスでもフォーマルでも使える」というメリットが選ばれる理由として多かったです。
ダブル裾はもともとダブル裾を着用していたお客様がお選びになることが多かったです。
ただ、筆者はスーツの用途にもよりますが、シングル裾が多くても、ダブル裾もかっこよいのでスーツとして持っていても良いと感じます。
スーツのことをもっと知りたいなら
スーツのことをより知りたいという方は以下の本が参考になります。
実際、オーダースーツの仕事に就き始めた頃、店の店長に進めていただいたものや、筆者が読んで「これは役に立つ」と感じたものを取り揃えました。
・紳士服を嗜む
・メンズEX
・賢いスーツの買い方
・王様の仕立て屋
紳士服を嗜む
この本はスーツの起源からスーツの寸法、スーツを作る際の体型補正、生地の種類などスーツに関する知識を網羅するまさに”スーツの専門書”です。
これ一冊さえあればスーツに関しての知識で困ることはないと言っても過言では有りません。
メンズEX
ファッション雑誌として有名な本です。
この雑誌は、筆者が服地業界に入って、店の店長にオススメしていただいた一冊です。
最初はこの雑誌で色々なコーディネートや生地メーカーの種類などを覚えさせていただきました。
雑誌なので写真が多くとてもイメージしやすい本です。
月刊なので季節に応じてコーディネートを決める時に役立ちます。
もちろん、毎月購入しなくても、一冊でスーツのことに関して勉強になる雑誌となっています。

賢いスーツの買い方
筆者が服地業界に入って初めに買った本です。
この本で学んだ一番のことは「スーツの組み合わせや与える印象」についてです。
・このスーツにはどんなネクタイが良いか?
・シャツはどれが合うか?
・スーツの柄はどんな印象を与えるか?
とコーディネートの基礎を学ぶことができました。
本書に書かれているコーディネートの法則を一つ覚えるだけでだいぶスーツのファッションの幅が広がります。
王様の仕立て屋
実は一番おすすめしたい本です。
漫画なのですが、スーツに関しての知識の量や質が半端じゃないです。
主人公がイタリアの日本人仕立て屋の話なのですが、この主人公の知識の広さがとんでもないです。
スーツに限らず靴だったり、日本の文化についてだったり幅広く解説してくれます。
基本的に一話完結物語なので一話ごとに一つ知識を得られるという分かりやすい構成。
活字が難しいという方に特におすすめの一冊。

新社会人の時の裾の形は〇〇が間違いない
今回は新社会人が選ぶと良いスーツの裾のデザインについて解説していきました。
最後にもう一度おさらいしておくと、新社会人がスーツを買う時に選ぶと良い裾のデザインは「シングル裾」です。
理由は…
・ビジネス、フォーマル幅広いシーンで使えるから
・周囲から見ても違和感をもたれにくいから
・修理費用が安価になりやすいから
です。
今回の生地が新社会人のスーツの購入の際に役に立てば幸いです。
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